ふらねコパンでの実践報告です。

 ふらねコパンは平成19年9月1日に開設した子育て支援とカフェと介護保険サービス事業の総称ですが、認知症対応型通所介護(デイサービス)には突発の宿泊利用にも対応できる体制を整備しています。その中で出会ったAさんとの関係作りや地域交流などを通した私たちの学びを昨年10月に久留米で開催された「実践者がつくる小規模多機能ケア」で発表しましたので、みなさまにもお伝えしたいと思います。
 このブログ掲載にあったっては娘様のご理解とご協力があって実現に至りました。本当にありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。 
         
子供から大人まで利用できる自宅以外の居場所を目指して・・・                                      ~Aさんにとっての第二の我が家~
【 はじめに 】             
ふらねコパンは、平成19年9月1日より、新地市営住宅の1階部分にて福祉事業を展開しています。「認知症対応型通所介護」を基盤とし、自主事業での通いやお泊り事業以外にも、「子育て支援 ぷてぃ」やカフェテリアの営業も行い、子どもから大人まで地域に住む人々の自宅以外の居場所作りに奮闘中です。  
 現在は、地域の高齢者を対象とした「健康体操教室」「革細工教室」や子どもを対象とした「親子でチャレンジ!」などを定期的に開催し、地域交流の場として活用してもらえるように取り組んでいます。    
【 事 例 】         
氏名:Aさん  91歳  女性  要介護1
病名:アルツハイマー型認知症 高脂血症 
家族状況:娘さんと二人暮らし
利用開始日:平成19年10月12日  月・火・金(週3回)利用
【 デイサービス利用前の様子 】     
 自宅では口数も少なく、1日中家の中で過され、同居中の娘さんの側を離れられずにいました。元々、悲観的に物事をとられる傾向にあり、徐々に変化していく自分自身を思い“自分はもう死ぬ”などと周囲に弱音をはかれていました。また何事も自分の方からは溶け込もうとはされない性格でもありました。“閉じこもりがちなため、外へ出て交流をもってもらいたい”という娘さんの意向により、デイサ-ビスが開始になりました。
【 デイサービス利用開始後の様子 】
 利用開始当初は落着きがなく、手持ちのカバンを何度も開け「もう帰らんといけん」という言葉が頻回に聞かれました。その都度スタッフが寄り添い、話を傾聴したり、一緒に行動を共にすることでスタッフと顔馴染みの関係が少しずつできてきました。徐々に安心感を持たれ、ふらねコパンの環境に溶け込まれていきました。
 ふらねコパンの環境に慣れられた背景には、「子育て支援ぷてぃ」利用のSちゃんやK君姉弟の存在があります。積み木や玩具で一緒に遊ばれたり、自ら子供に絵本を読んで聞かせたり、歌を歌われたりと子供のお世話がA様の役割になっていきました。
 その他にもエプロンをつけて調理も手伝われ、地域の行事やイベントにも率先して参加されるようになりました。
  
【 宿泊体験(H20.1月末) 】
 初めての宿泊は、遠方から会いに見えた妹さんと二人での利用で別々の部屋でしたが、身内が一緒ということもあり、ゆっくりと過されました。2回目からは一人での宿泊利用です。娘さんの協力で、少しでも混乱がないようにと手書きの手紙を書いて頂き「今日はここに泊まるの?娘は知ってるかしら?」と不安になられる時にその手紙をお見せすると安心されました。           
(宿泊当初のA様の言動)
・居室に入られるが、夜遅くまで物音続き、朝方早くから物音聞かれる。
・「もう寝ます」と入室されるが、居室より物音が聞こえ「今から帰ろうかね」と荷物を持って出てこられる。
・何度も部屋のドアを開けたり閉めたりして鍵の確認をされる。
・トイレに起きてこられると、自分の部屋がわからなくなり、フロアをうろうろされる。
・真夜中に「何かおかしい。娘は迎えにも来ない」と落ち着かなくなる。
【 現 在 】
 その後も、娘さんと自宅とふらねコパンでの夜間の様子を共用しながら試行錯誤の上、宿泊回数を増やしていきました。徐々に以前のような言葉や行動はなくなり、今では、デイサービスに来るのを大変楽しみにされています。また、月曜の利用の際にそのまま宿泊され、週1回の定期的な宿泊が可能になりました。娘さんは「在宅での介護は困難。もう限界」とグループホームの申し込みをされ受入れのお知らせがあったそうですが、いつでも宿泊を利用できる安心感か、今もなお在宅介護を続けておられます。
【 成 果 】
○言動・行動の活性化
 子供との交流が会話の増加や行動が活発になるなどの変容がみられました。 
○社交性の向上
 娘さん以外の人との係わりが苦手だったのが、自ら地域の行事やイベントに積極的に参加できるようになりました。
○ご家族(娘さん)の介護負担の軽減
 顔馴染みのスタッフが対応することで、自宅以外での定期的な宿泊が可能になりました。
【 考 察 】
 A様は、大好きな子供のお世話というふらねコパンでの役割を持ち、顔馴染みのスタッフが関わることで安心感が生まれ、自宅以外にも自分らしく過ごせる居場所を見つけることが出来ました。これにより、娘さんの介護疲れが軽減され、在宅での生活が維持できています。
 A様に限らず認知症がある方でも、馴染みの環境での通所サービスや柔軟な宿泊サービス等の生活支援が受けられ、その人なりの役割や関係を築くことができれば、在宅での生活が可能になるのではないかと思います。

                                                発表者 松嶋真弓
 私たちの稚拙な、それでも一生懸命な取り組みが同じように地域で頑張っていらっしゃる介護に携わる方々の力になることを願っています。
                                ブログ担当 谷口